火災保険は火災や延焼に備えるための保険商品ですが、災害が発生した後すぐに保険金が請求できなくても、期限内であれば申請が可能です。
ここでは、火災保険の請求期限とその理由、解約後の保険金請求について詳しく紹介します。
火災保険の請求期限は3年
火災保険の請求期限は、災害が発生した日から3年以内と決められています。ただし前提条件として、火災発生からできるだけすみやかに保険会社に連絡し、状況を伝えて必要書類を提出しなければなりません。
状況によってはすぐに請求手続きができない場合もありますし、避難生活や入院などを余儀なくされた場合、1年以上の長期にわたって手続きが滞ってしまうこともあります。そのようなケースを想定し、保険法第95条によって火災保険の請求期限は3年と定められています。
保険法:第95条
保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第六十三条又は第九十二条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、三年間行わないときは、時効によって消滅する。
火災が発生してから3年間は請求権がしますが、万が一3年以上前の損害の保険金を請求できません。※独自の請求期限を定めている保険会社もあります。
火災保険の請求期限がある理由
火災保険の請求期限は以下のような理由によって定められています。
理由1:経年劣化と区別がつかない
火災保険に請求期限が設けられているのは、保険金額を鑑定する際に「火災直後の状況」を見て判断しなければならないためです。
請求が遅れるほど現場は風化し、災害発生直後の状況からはかけ離れてしまう可能性が高く、どの程度の災害が起きたかを判断しにくくなります。3年以内であればいつでも申請はできますが、正しい保険金額を算出するためにはすみやかな申請が重要です。
理由2:保険会社を守る
火災保険の請求期限が3年までとされているのは、保険会社の支払能力を圧迫しないようにする目的もあります。
3年以上前の古い火災について請求権が存在していた場合、多くの請求が寄せられる可能性が高く、それらに支払いをすることで保険会社の支払能力が限界を迎え、保険金を払えない事態が発生するおそれもあります。
火災保険解約後でも申請は可能
火災保険は一度解約した後も3年以内であれば請求権が存在し続けます。何らかの事情によって火災保険を解約してしまっても、3年以内であれば火災保険金の請求を行うことができます。
火災保険は解約していても保険契約期間内の保険効力は失う事はありません。(遡及申請可能な期間は原則3年前までとされています)もちろんAさんも解約した保険会社への保険金申請が可能です。(修繕をした後でも、修繕前と後の写真や比較ができるデータ、修繕にかかった費用の領収書や見積書などの履歴が確認できれば保険金を受け取れる可能性があります)
火災保険の請求期限が過ぎても請求できた特例
3月11日に発生した東日本大震災では長期にわたり避難生活を強いられる被災者が多いことや、家主や保険の加入者が死亡し遺族が保険請求を行えないケースなどが発生。さらに激甚災害にも指定されたため、3年以上前の損害でも地震保険の補償範囲内とする特例措置が取られました。
東日本大震災では自宅が損壊または浸水の被害に遭い、仮設住宅に入居する被災者が数多く、貴重品を持ち出せずに身一つで逃げ出したケースもみられました。火災保険の詳細は把握していても、物理的に保険の申請ができない問題もあったため、特例措置として3年の申請期限が外れることになりました。
この震災が前例となり、今後も台風や洪水などの大規模な災害が起きた場合には同じように特例が設けられることが予想されます。
火災保険の見舞金の相場や支給時期
火災や台風などにより被害を受けた後は、家屋の修理や家具の買い替えにお金がかかります。そこで、特約やオプションとして「臨時費用補償」を付帯することで、さまざまな用途に使える見舞金が支給されます。
見舞金は火災保険の損害保険金の5%が目安となり、一般的に損害保険金の金額が決定してから支払われます。
火災保険の損害保険金はいつ支払われる?
保険法では、損害保険金の支払いに必要な項目を確認するための期間が経過する日を保険金の支払期限と定めており、一般的に保険金の請求完了日を含めて30日としています。
損害保険金は事故の発生原因・状況の確認・損害額の算定を調査しなければならず、なかには特別な調査が必要なケースもあるため、30日の日数を必要としています。ただし、重ねて調査が行われるような状況では、30日からさらに日数が延長されることもあります。支払期限を過ぎて保険金が支払われる場合は、遅延損害金が支払われます。
火災保険の請求期限内でも申請がおりないケース
火災保険は請求期限内であればいつでも申請を行うことができますが、以下のような状況では申請が認められません。
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- 経年劣化
火災保険では、火災によって建物や家財道具に一定以上の損害を受けた場合にのみ保険金を請求することができます。
建物や家財道具など、補償の対象が完全に使えなくなっている状態は「全損」と呼ばれ、「大半損」「小半損」「一部損」と続きます。これら4段階のどこかに当てはまっており、火災の発生から3年以内であれば保険金の申請が行えます。
例外として「経年劣化」による損害は補償の対象とはなりません。長年の雨風の侵食作用によって剥がれ落ちた住宅の外壁を「火災による被害」として申請することはできません。
- 経年劣化
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- 重過失が原因
重過失とは「重大な過失」とも呼ばれ、本人の不注意や見過ごし、見落としによる過失を指します。注意を払っていれば予見や予防ができたが、それを見過ごしてしまい損害が発生するケースです。
火災における重過失とは、火をつけたガスコンロの放置や引火、寝タバコ、こたつやストーブと毛布の接触による火事の発生、暖房器具の消し忘れなどが含まれます。
これらの重過失が原因と認められる火災には、火災保険の適用はされないため注意が必要です。
- 重過失が原因
- 地震・津波・噴火が原因
火災保険は火事による直接の損害を補償するものなので、地震・噴火・津波を原因とする損害を補償することはできません。たとえば、地震でストーブが倒れ、床のカーペットと接触し火災が発生した場合、地震が直接の原因となります。
この場合、火災保険に付帯する「地震保険」と呼ばれる特約で損害をカバーすることになるので、火災保険の加入の際にセットで地震保険にも入っておくと安心です。
近年では巨大地震にともなう被害が数多く報告されており、火災保険だけに加入していれば安心というわけではありません。損害保険はもしもの事態に備える保険商品ですから、地震保険の検討もあわせて進めていきましょう。
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